全く、昨今の地球温暖化とやらにはほとほと困ったものだ。こう暑くては仕事にならない。窓の外、遠くの路面で蜃気楼と混じり合って揺れている蝉の声にうなだれながら、胸ポケットから取り出したハイライトを一本咥え、微量のCO2を排出する。

 だが、今日の俺には    彼は思わず微笑む。丁度サイコロの一面だけが違う色で塗られているように、この午後にはささやかな喜びが待っている・・・はずだった。






ムスメ「きゃああああああああああ」

刑 事「!? なんだ!? どうした!!

 駆けつけるとムスメは床にぺたんと座り込み、顔を両手で覆っていた。

刑 事「・・・一体何があった?」

ムスメ「無い・・・あたしの大切な・・・おやつ・・・」

 彼は愕然とした。このムスメはおやつ如きであのような悲鳴を上げたというのか。・・・いや、そのような考えは所詮他人であるが故に抱ける気楽さが可能にするものかもしれない。ここは刑事として当事者に寄り添い、共にそのおやつを探すべきであろう。

ムスメ「確かに仕舞っておいたの・・・冷蔵庫に・・・暑いか
    ら・・・キンキンに・・・爽やかな・・・気分に・・・なろう
    と・・・」


 ムスメはあまりのショックと喉の渇きで、上手く言葉を発せない様子であった。無理もない。この猛暑の中、何か冷たいおやつを失ってしまったのだから。

刑 事「一体どんなおやつだったんだい?」

ムスメ「うっ・・・うっ・・・赤くて・・・つやつやで・・・キンキ
    ン・・・に・・・うえっ・・・」

刑 事(こいつは参ったな・・・)

 嗚咽交じりに伝えようとするムスメに、これ以上声を出させる勇気は彼には無かった。ここは刑事として限られた証言を元に、答えを探し出すしかあるまい。

刑 事(赤くてつやつや・・・何だろう。りんご飴だろうか。
    あれなら夏祭りの屋台でも定番の夏の風物詩。十
    分に可能性はあるな。いや、ちょっと待とよ。こ
    のあたりでりんご飴を売っている屋台なんて見た
    ことは無いな。それにあれは爽やかかと言われる
    と若干返答に困る。・・・この線は無さそうだな。)

ムスメ「うえっ・・・あたしの・・・キンキンのと・・・うっ・・・
    うっ・・・」

刑 事(何だっ・・・何なんだそのおやつはっ・・・キンキンの
    と・・・?クソッ!! と・・・とうもろこしか?赤い
    とうもろこしなのか?馬鹿が!! 刑事が聞いて
    呆れるぜ・・・)


 彼は答えを急ぐあまり正気を失いかけていた。人は往々にして答えというものを何か大きな、遠くの存在として捕らえがちである。しかし、それは案外もっと身近な   毎日眺めている夕日のような存在であることも多いのではなかろうか。

刑 事(いや、ちょっと待とよ・・・赤い・・・つやつやの・・・爽
    やかで・・・キンキンに冷やす・・・と・・・ん?ちょっと
    待とよ・・・?ちょっと待と)







    ちょっとまと   






刑 事「トマト!!! 犯人はてめえだったのか!!!

トマト「くっ!! 離しやがれ!!

刑 事「うるせえ!! 話は署でゆっくり聞こう。さあ
    来い

トマト「チクショーーーーー」

ムスメ「いや、はよ返して」

トマト「はい」































































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