正面の水槽に映る顔。
 泡がかき消そうとするのだ
 けれど、すっかりこびりつ
 いてしまった。


     ( わすれてね )



 彼は少しだけ目を見開いた
 気がする。私は人間の性別
 なんて見た目では区別でき
 ないのだけれど、男なのだ
 と思う。


   ( そうじゃないんだ )



 ずっと泡を見つめているもの。



     ( だから )



 ようやく彼は振り向いた。
 こちらへ向かって来る。

 でもきっと私達は話さない。



     ( だから )




 その目。私も泡になってしまいそう。